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STORY

中東諸国への販路拡大

決して諦めず、
できる方法を考え、
商社ビジネスの可能性を
拡げていこう。

PROFILE

グローバル事業
2009年入社

STORY01

中東の魅力付けが商社パーソンである自分の使命

入社後数年間は鳴かず飛ばずだった、と種市は振り返る。上司の指示通りに動かない。思い込みで勝手にやってしまう。同じミスを繰り返す。そんなどうしようもない社員だった。転機となったのは、2013年の中東販売課への異動だ。30歳という節目の年齢を目前に控え、彼の中で自覚が芽生えた。真正面から仕事に向き合うと、商社パーソンとしての本分が見えてくる。それは、より細かく、正確さに磨きをかけることだった。まず経済新聞を隅々まで目を通すようになった。行動が変われば習慣が変わる。そして、習慣が変われば人格が変わる。以前は「種市はこのままで大丈夫か?」といった具合に周囲から心配され、ときにはあきれられていたが、「何かいいアイデアはないか?」「ちょっと相談に乗ってくれないか?」と頼られる存在になった。

スタイレムにおける中東地域に向けた販売は歴史がある。実はスタイレムの中東販売事業は昭和45年(1970年)にさかのぼり、日本の繊維商社としてはパイオニアだった。具体的な事業内容は、中東市場への繊維製品の輸出販売だ。また、それに伴い国内外からマテリアルを調達。民族衣装の「トーブ」や「アバヤ」に使用される白地のテキスタイルをメイン商材に、現在はレディースファッションの素材も取り扱っている。

日本人にとって中東は、欧米などに比べ馴染みが薄い。国家間紛争もたびたび起こり、どちらかといえば怖いイメージを持つ人が多いのではないだろうか。ただ、ビジネスにおいては、非常に平和的で、友好的で、紳士的だ。特にこちらから現地のアラビア語で挨拶をすると、取引相手とはすぐに親密になれる。中東企業とトレーディングをする際、日本のメーカーや商社は少なからず警戒心を抱くものだが、種市は中東販売課での業務を通し、「もっと中東の国々を身近に感じてほしい」「なんとなくのイメージだけでビジネスを諦めてほしくない」と思うようになった。自分が得意なこと、自分にしかできないことを実現するのが、商社パーソンである自分の使命だ。それは今、中東の魅力付けにほかならない。目の前のトレーディングだけではなく、中東と日本の産業の未来のために必ずやり遂げようと、強く心に誓った。

STORY02

安定の既存ビジネスをベースに新規ビジネスに挑戦

既存ビジネスで結果を出すのが最優先事項だが、長い歴史を誇る中東販売課には先人たちが耕してくれた豊かな土壌がある。幸運なことに、それほど注力しなくてもビジネスが成立してしまう環境が整備されていたのだ。そこで種市は、新規ビジネスに軸足を移すことにした。まず行ったのが、スタイレムのオリジナル商材「TUTTI(トゥッティ)」の売り込みだ。TUTTIとは、ポリエステル繊維を主体に人工ゼオライトなどを特殊配合したもので、いわば繊維からできた土であり、従来の植物培養土の代わりに使用できる。軽量で、保水性や通気性に富み、長期間にわたり利用できるだけでなく、手が汚れにくく室内でも取り扱いやすい。当初は民間企業同士のトレーディングを想定していたが、いつのまにかサウジアラビア政府を相手にした国家プロジェクトへと発展していった。となれば、こちらも日本政府に話を通したほうが良いのではないかと考え、さまざまな人脈をたどったところ、とある国会議員とコンタクトをとることができた。しかし、結果的には、貿易関連の民間団体を窓口にするようにとの回答があり、プロジェクトとしては振り出しに戻る。ただ、本件を通して種市は、わずかな可能性を追求できたことに一定の手応えを感じていた。新規ビジネスとは、そもそも前途多難なものなのだ。できるかできないか思い悩む前に行動を起こし、その都度軌道修正するしかない。当然、サウジアラビアへのTUTTI売り込みはまだ諦めていない。

日本から中東向けの生地輸出は現状、プレーヤーも商材も商流も固定化している。民族衣装とは全く異なる商材を扱えないかと考えた種市は、折よくカタールでサッカーのワールドカップが開催されることもあり、現地企業と組んで観戦用の帽子を製作することにした。参加国の国旗に色分けされた帽子は10万個を超える売上を記録し、パートナー企業からは何度も「シュクラン(アラビア語で「ありがとう」の意)」と言われた。既得権益という障壁があるなら、それをクリアする方法を考える。壁をぶち壊すのか、よじ登るのか、あるいは抜け道を探すのか、とにかくできる方法を考え実行することを、種市は信条としている。

STORY03

中東市場における
日本ブランドを高めていく

もともと民族衣装メインだったところにレディースファッションを投入したのが2017年のこと。2018年からドバイのイベント会社が運営する展示会に3回出展し、2022年には初めて自社単独で展示会を開催した。そして、2023年度はコロナ禍前の業績をかなり上回り、前年比125%と一気に増収した。 とはいえ、種市に慢心はない。むしろ、常に危機感を覚えながら今の仕事と向き合っている。少々極論にはなるが、中東市場の売上をスタイレムが伸ばそうが、国内の他の繊維商社が伸ばそうが、それは大した問題ではない、と種市は考えている。長期的な視点で物事をとらえたとき、日本の産業や製品が中東地域の国々にとって魅力的に映るかどうか、ということのほうが、この一年、あるいは数年単位の売上よりもはるかに重要なのだ。日本の繊維業界は今、大きな岐路に立っている。スタイレムをはじめとした繊維商社が50年後、100年後も事業を継続するためには、規模の限られた市場の中でシェアを競うのではなく、ときには協業しながら日本ブランドを高めていかなければならない。実際、種市は他社の商社パーソンとの情報交換会の場を取り仕切る役割も担っている。そして、その商売相手として、中東はとんでもなく大きな可能性を秘めているのだった。

中東の中でも種市が注目するのがサウジアラビアだ。サウジアラビアは昨今、オイルマネーを元手に積極的な投資を行っている。ゴルフやサッカーなどのプロスポーツ、音楽イベントといった興行には特に力を入れる。さらに、2030年には首都リヤドでの万博、2034年にはサッカーワールドカップの開催も控えている。また、全身を覆うロングコート風の女性の民族衣装であるアバヤについて、2018年に着用義務が撤廃(事実上の自由化)された。アバヤを取り扱うスタイレムからすれば複雑な気持ちではあるが、逆に新たな商機を生み出すチャンスとも言える。商材は繊維や衣服にこだわる必要はない。興行に力を入れているのならば、そこに入り込む手はある。サウジアラビアでアイドルグループを設立・運営する、というのも面白いかもしれない。商社ビジネスの可能性は無限だ、と種市は意気込む。